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洗礼されたクーペ

BMW E92 320i 6速MT

「M3じゃないから、面白い。」

E92を見て、M3を思い浮かべる人は多いと思います。

でも、今回の320iはM3ではありません。

むしろ、そこがいい。

M3のような強烈なパワーもない。
アクセルを踏んだ瞬間に背中を蹴飛ばされるような刺激もない。

じゃあ、何がいいのか。

「ちょうど、自分がクルマに乗っている感じ」が残っている。

これです。

 

320iのエンジンは、今の基準で見れば決してモンスターではありません。

だから、街中でもワインディングでも、クルマの性能を使い切るような感覚で遊べる。

3速まで引っ張るか。
ここで4速に入れるか。
少しだけブレーキを残して曲がるか。

そんなことを考えながら走っていると、いつの間にか目的地を通り過ぎている。

「どこへ行くか」より「どうやって行くか」が楽しくなる。

この感覚は、速いクルマなら必ず味わえるものではありません。

そしてE92というクルマ自体が、今見ると絶妙です。

古すぎない。
でも、新しすぎない。

 

 

液晶だらけでもないし、何でもクルマが判断してくれるわけでもない。

運転席に座ると、目の前にあるのは必要なものだけ。

エンジンをかける。
クラッチを踏む。
1速に入れる。

あとは自分次第。

この「面倒くささ」が、今となっては贅沢です。

さらに面白いのが、E92の320iという立ち位置。

「BMWに乗っています」と肩肘張る必要がない。

M3ほど構えなくていい。
高級車として気取る必要もない。

でも、2ドアのBMWクーペ。

ドアを開けて乗り込むだけで、セダンとは違う気分になる。

そして6速MT。

ここまで条件が揃うと、単なる「中古のBMW」ではなくなる。

今、わざわざこれを選ぶ理由があるクルマです。

新車ではもう簡単に手に入らない。

 

 

同じようなクルマを探そうとしても、時代が進むほど選択肢は減っていく。

だからE92 320i 6速MTは、

「安いから買うクルマ」でも
「古いから面白いクルマ」でもない。

“今ならまだ、普通の顔をして手に入れられる”ことが魅力なんです。

数年後に中古車サイトを眺めながら、

「この頃はまだE92のMTが普通に売ってたな」

なんて思う日が来るかもしれない。

そう考えると、ちょっと欲しくなりませんか。

速さでは選ばない。

新しさでも選ばない。

「これに乗って帰りたい」

そう思えるかどうか。

E92 320i 6速MTは、そこに価値がある一台です。

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